外環反対連絡会が

 交通量抑制策などを市川市に申し入れ

   〜東京大気汚染裁判判決を受けて〜

外環反対連絡会  高柳俊暢





 (2002年)10月29日、東京地裁において東京大気汚染公害裁判第一次訴訟の判決がありました。
 私たちは1996年の提訴以来、この裁判が国のクルマ優先の交通政策、高速道路建設至上主義の道路政策の抜本的転換をもたらすものとして、全力をあげて原告住民のみなさんを応援して参りました。判決日当日も午前8時から市川駅前で「1メートル1億円の外環道路を造るより患者の救済を!」という横断幕を掲げマイク宣伝の後、住民15名が裁判所前集会や都庁前集会、国土交通省交渉と終日原告住民のみなさんと行動を共にしました。

 判決はメーカー側の賠償責任を免責していることや、東京都内の面的汚染による健康被害に対する国などの賠償責任を認めなかったことなど、不満足な点もありますが、道路沿線の大気汚染と健康被害との間に因果関係を認め、それに対する国などの法的責任に基づく賠償を認めるという司法の判断は完全に定着しました。

 さらに今回の判決では、今日のような深刻な事態が昭和48年(1973年)の時点で予測でき、国などが交通量の抑制など総合的な施策を構じていれば回避できたとしており、メーカーの賠償責任を免責した裏返しとして、「単体ごとの排ガス規制を進めても交通量が増えれば効果は相殺される」と交通量削減策の重要性を特に強調していることは重要です。

 こうした主張は私達がこの30年間、外環道路反対の根拠として主張してきたことです。
 また、今回の判決においてもこれまでの全国各地の大気裁判同様、市川市内を含む千葉県内の幹線道路沿いで、学童の喘息発症率が異常に高い事が、原告住民側勝訴の根拠になっています。その意味で今回の判決を東京都内の問題だけとして受け止めるのでなく、市川市自身の問題として受け止めなければなりません。
 そこで私たちは以下のような申し入れを市川市長に行いました。






申 入 書





2002年11月1日


 市川市長 千葉光行 様


外環反対連絡会 世話人代表 高柳俊暢




  東京大気汚染公害裁判(第一次訴訟)判決を受けての
  市の対応について


 去る10月29日、東京都内の幹線道路沿線の住民が道路からの大気汚染によって喘息など深刻な健康被害を受けたことを訴えた東京大気汚染公害裁判(第一次訴訟)に対し、東京地裁は国、東京都、首都高速道路公団の責任を認め、公害健康被害賠償法(公健法)による認定打切り以後発症した患者住民を含む、7名の住民に賠償を命じる判決を下しました。
 すでに報道されているように、この判決には原告住民が併せて求めていた自動車メーカーの賠償責任を認めなかった点や、同じく原告側が主張した東京都内全域の面的汚染による健康被害への賠償責任を認めなかった点など、原告住民はもちろんこれを支援してきた私たちにとっても納得できない面があります。  しかしながら、道路沿いの住民が大気汚染によって健康被害を受けており、その原因はクルマから出される排気ガスに含まれている汚染物質であること、道路を造り、管理する立場にあるものはこうした健康被害に対し環境基本法などに基づく法的責任を有するという、西淀川、川崎、名古屋、尼崎と続いてきた司法の判断は完全に定着しました。
 このことを踏まえ私たちは市長に対し以下の点を申し入れます。市長は私達との会見に応じた上、これらに対する見解を示していただきたいと考えます。

  1.  今回の判決は「道路沿道の深刻な大気汚染をもたらした主な原因は交通量の増大にあり、それは昭和48年(1973年)の時点で予見でき、国などが交通量の抑制を含む総合的な対策を行えば回避できた」としています。こうした国などの政策の誤りによって健康被害を受け、現在も苦しんでいる患者住民のみなさんに対し、市川市長はどう感じているかについて率直な見解を聴かせて下さい。

  2.  「クルマが増えることを野放しにして道路建設だけを進めれば、クルマが益々増え大気汚染が深刻な状態になるのは30年前に予見できた」という主張はまさに私達がこの30年間行ってきたことであり、かつて市川市が外環白書のなかで国に訴えたことでもあります。
     現在、市川市は「外環道路が市内の南北方向の交通をスムースにする」との立場から外環を促進しています。しかし巨大な高速道路が市内にできれば接続道路などへの交通量の増大は避けられませんし、市川市はそれに合わせて外環に接続する都市計画道路などの整備促進を進めようとしています。交通量の抑制策が構じられなければ市内の交通量が急速に増大しかねません。
     もちろん市内交通量の抑制は市川市だけで出来るものではありませんが、国や県に早急に自動車交通の総合的な抑制策を求めるとともに市自身5年、あるいは10年という年度目標のもとに市川市内の交通抑制策をたてて本気で交通量の抑制に取り組むべきだと考えます。

  3.  今回の判決では東京都内の面的な汚染に対する賠償は認められませんでしたが、昼間12時間の交通量が4万台以上、1日24時間の交通量が6万台以上の幹線道路沿い50メートル以内の患者住民はすべて賠償の救済の対象になりました。
     市川市内の京葉道路や湾岸道路はこれらの道路を上回る交通量があります。また現に京葉道路沿いの稲荷木小学校では10%を超える学童が喘息に苦しんでいますし、湾岸道路に近い信篤小学校を含む千葉県内の幹線道路沿いの小学生で喘息の発症率が田園部に比べ異常に高いことが一連の大気汚染裁判での判決の根拠になっています。
     このことを考えると市川市内のこれらの地域の環境改善策は急務であり、道路管理者である国や道路公団と協力して早急に具体策をたて実施する必要があります。また、この地域の住民に対し健康調査を実施し、健康被害を受けている住民にたいしては国や公団に救済を求めることが今回の判決の趣旨に沿った自治体としての対応だと考えます。

  4.  外環道路の交通量は国の発表している予測でも1日8万台から8万5000台です。既に供用されている埼玉県内では1日15万台以上という地点もあります。しかも市川市内の計画路線は市街地にあたっています。「十分な環境対策をしてあるから大気汚染は心配ない」という見解は30年前も同じでした。外環道路について実施した環境影響評価は現行の制度に基づく環境評価と比べても予測項目や予測手法、評価の基準などで不完全なものです。特に上記のような京葉道路や湾岸道路との接続部は巨大なジャンクションが造られる計画で、大気汚染が現在以上に深刻になることは目に見えています。
     「既にアセスメントを行ったものについては、それが不備なものだと分かっていても一度行ったアセスメントはやり直さない」というのは国などの責任を厳しく断罪した今回の判決の趣旨に反します。少なくとも現行の制度に則った形で外環道路の環境影響評価をやり直すよう国に求めて下さい。そしてそれまでは事業化を進めないよう求めて下さい。

  5.  莫大な借金をして供用後の交通料金でそれを返済するという現在の高速道路建設のやり方では、もし交通量が減ればそれだけ借金の返済が困難になるわけですから、交通量を減らすという抜本的な施策を実施する発想は出て来ません。「東京や大阪などの大都市域では交通量が多く、借金で高速道路を造っても採算性が見込める」という東京都知事などの考え方は「今後もこうした地域での交通抑制策を考えない」ということで、これではいつまでたっても大都市や周辺の大気汚染は改善しません。将来の自動車交通量を大胆に削減する施策のためにも借金をして高速道路を建設するという制度を止めるよう国に強く求めて下さい。




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