■資料

千葉県の不正経理に関する内部告発

〜「沼田知事の5選に反対し、情報公開を進める県職員の会」からの投書〜



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 1997年1月6日付け及び2月3日付けで、「沼田知事の5選に反対し、情報公開を進める県職員の会」というグループからマスコミや県内政党、労働組合、市民オンブズマン連絡会議などに投書がありました。千葉県政に関する参考資料として掲載します。



●投書(1997年1月6日)


 新年おめでとうございます。
 今年は知事選挙の年であり、すでに沼田知事は5選出馬を表明されていますが、私たちは、沼田知事の5選は、県政の停滞、腐敗を招くという立場から強く反対します。
 私たちが反対するのは沼田さんだから反対するのではなく、誰であろうと多選が民主主義を破壊すると考えるから反対するのです。アメリカの大統領を初めとして多くの国で権力者の3選(多選)が禁止されているのは、権力者が長年その他位を占めると、どんなに優れた人であっても、権力が私物化され、腐敗する危険があるからです。

 沼田県政を振り返ってみますと、3期までは比較的バランスのとれた公平な人事と積極的な施策がとられたと高く評価するものです。しかし4期を迎えてから停滞と腐敗の兆候がいたるところに現れてきました。多選の弊害である、たとえ本人が腐敗しなくても、側近が固定化し、腐敗するという現象がすでに出てきています。その結果、情実人事とことなかれ主義が県庁に横行し、県職員の多数は仕事にやる気を失っています。職員と知事の間には側近という厚い壁ができてしまい、我々職員の声は知事に伝わらず、我々一般の県職員の間では知事は裸の王様と呼ばれています。

 現在、全国各地で公費の乱用が指摘され批判を浴びています。しかし千葉県ではそのようなことは報道されていません。では、千葉県ではそのような公費の乱用は行われていないのでしょうか。これは沼田知事自身が一番よく知っているのではないでしょうか。今、幹部職員の間では「将来の返還に備えて貯金をしている」というブラックジョークがささやかれています。

 公費の乱用、使い込みの手口は基本的には各県と同じです。各課の庶務主任が課長補佐と庶務係長の指示を受け、旅費、時間外、物件購入のカラ伝票を切り、裏金を作ります。
 裏金の第1の使いみちは課長本人の自己接待です。課長個人のための完全な飲み食いです。もちろんタクシーの送り迎え付きです。課により課長により回数や程度は異なりますが、どの課でも行われている悪しき慣習です。

 第2の使いみちは議会工作費です。多選を有利に運ぶため議会のまる抱えが知事周辺によって進められ、オール与党化が進んでいることもあり、有力議員を接待したり、贈り物に使われます。各課で直接行う場合と各部の主管課でプールして行う場合もあります。これだけ接待攻勢を受けている議員に公費の乱用を問題にすることができないのは火を見るより明らかです。

 第3の使いみちは人事工作費です。情実人事が広く行われていることから、部長や知事側近の有力幹部、場合によっては知事自身を招いての接待が行われています。知事自身が部課長の公金による接待、贈り物を受けていてどうして職員の監督ができるでしょう。

 第1から第3までの使いみちは、いわゆる「官官接待」ではなく、県庁幹部職員による県庁幹部職員のための接待であり、県職員の間では「県県接待」と揶揄されています。実際に職員が行っていない出張命令が作られ支出されます。私たち一般の県職員の旅費、時間外手当が不当に流用され、幹部職員の飲み食いに使われているのです。「県県接待」の実態は県庁舎前で夜、客待ちをしているタクシーの運転者が一番よく知っています。何しろ一万かかろうが、二万かかろうが、飲んだらタクシーチケットで自宅まで送ってもらうのは県の課長の常識になっているのですから。

 第4の使いみちは、今まであげた不正な使いみちとは異なり、現在の硬直化した予算、財政システムでは支出の困難な事務経費に使われるものです。計上した予算は1円残らず使い切らねばならないという非現実的なシステムを改善し、余った金は返す、必要な金は堂々と出すというあたり前のことができるようになれば、この使いみちはなくなります。
 ここが重要なポイントです。なぜならば第4の使いみちを隠れみのにして、あるいはこれを口実に裏金が作られ、その結果として、第1から第3のまったく不当な使い込みが行われているからです。硬直化した予算、財政システムが改善されれば、裏金を作る口実がなくなり、不正な使い込みがしにくくなります。逆に言えば、現在の建前にこだわったシステムが存続するかぎり、裏金は作られ、使い込みは後を絶たないでしょう。この点をマスコミはもっと掘り下げて報道すべきです。宮城県で指摘された公費の乱用のなかに職員の夜食の公費支給がありました。しかし議会等で残業しても、予算の都合で時間外手当が支給されない職員の権利はどうなるのでしょうか。(千葉県でもまったく同様です)。サービス残業の実態をまったく報じないマスコミは職員の支持、理解、協力を得ることはできないでしょう。

 以上のべた公費の乱用は、程度の差はあれ、全国の自治体で行われていることと思いますが、千葉県においては知事の多選、議会政党のオール与党化がこの傾向に拍車をかけ、腐敗がまさに鼻を突いています。おそらく秋田、福岡の例からいっても50億を楽に超える公費が乱用され、幹部職員の飲み食いに消えていることでしょう。これはもう立派な犯罪です。

 沼田さんは知事選に出馬すれば、おそらく当選するでしょう。しかし任期中にこの問題が表面化し、秋田県知事のように辞任に追い込まれる可能性は大きいと思います。あなたにできることは、勇気を持って出馬を辞退することです。そして、残された任期中に公費の乱用を生み出す非現実的な予算、財政システムにメスを入れることです。それがあなた自身の名誉を守ることであり、あなたを知事に選出した500万県民の付託に答える道です。

 沼田さん。知事の椅子という公職を私物化することはやめて下さい。4期16年あれば、あなたの所信と志を世に問うことは十分できたはずです。4期でできないものは5期やってもできないでしょう。若い人に道を譲ることはそんなにむずかしいことでしょうか。私たち県職員は、知事が変わることを、県政の変革を強く待ち望んでいます。あなたの5選を推している人々は、自分たちの保身と権益を守るためにあなたを利用しようとしているだけです。都合が悪くなれば、あなたは秋田の知事のように簡単に切り捨てられるでしょう。

 私たちは県政の主人公は県民であると考えます。そのためには県行政にかかわる一切の情報は県民に開かれているべきだと考えます。しかし、沼田執行部は都合の悪い情報は県民に隠そうと懸命です。2年前に口答で情報公開に関してある御達しが職員に出されました。<今後情報公開の要求が出てくる可能性があるので、具合の悪い事項は公文書には記載しないで、例えば会議終了後の宴席の参加者名や人員は口答で上司に説明するとか、別紙に記載して、決裁後破り捨てる等の処置を採るように>という悪質なしろものです。

 私たちは知事の5選に反対の立場から、このメッセージをマスコミと各政党、労働組合、市民オンブズマン連絡会議に送ります。そして今後は、県民が正しく判断できるよう沼田執行部がひた隠しにしてきた情報を県民に明らかにして参ります。

 県職員すべてが腐敗しているわけではありません。私たちは少数ですが、まともな仕事がしたいと考えているまともな職員は私たちのまわりにたくさんいます。しかし上司に命じられれば、ニセの伝票でも書かなければならないのが職員の立場です。しかし、もう泣き寝入りはしません。口をつぐんで貝になることは腐敗に手を貸すことになります。これからはどんどん発言してゆきます。それが私たちの働く職場を少しでも良くする道だと思うからです。

 1997年1月6日

沼田知事の5選に反対し、情報公開を進める県職員の会
 



●投書(1997年2月6日)


 県政記者会の皆様へお知らせします。
 先週、会計検査院の検査が行われ、住宅課で事務費の不正使用が指摘されました。おびただしいタクシーの不正使用が明らかになりました。我々が指摘してきたところですが、千葉県庁における公金の乱用(その実態は、知事側近幹部職員による私的飲み食い)は住宅課だけではなくすべての課に及んでいます。今回の検査院指摘も、職員の内部告発を受けてしかたなく行ったもので、旅費までは調べていません。(おそらく、旅費を調べれば余りにも額が大きく、知事の責任まで発展する可能性があるのでやめたのでしょう)。しかし、公的機関の調査によって乱用の一端が明らかになった意義は大きいものがあります。後は記者の皆様の取り組みによって50億とも100億とも言われる千葉県における公金の不正使用の全貌をぜひ明らかにして下さい。

 今週から議会が始まります。各課で期間中多数の職員が残業しますが、これがほとんどすべて時間外手当が支給されていないサービス残業だということを記者の皆様は知っていますか。議会の期間中だけではなく、県職員のほとんどは時間外手当の申告はしていないのが実情です。職員が申告しない理由は、申告しても申告に基づいて手当が支給されないからです。そして、申告すると上司にうるさいやつだとにらまれるからです。こんなことがおかしいことはみんな知っています。しかし、昇進その他で不利益を受けることがわかっているので、みんな黙ってサービス残業をしているのです。労政課では民間企業に対して労基法を順守するよう指導していますが、自分のところではただ働きを強いているのです。議会期間中残っている職員が時間外手当を実際に申告しているか、皆さんが調べればすぐわかります。宮城県で議会期間中残っている職員への食費支給が問題となりましたが、サービス残業の実態もあわせて考えるべきです。公金乱用の被害者は県民だけではなく、労基法を無視してただ働きを強いられている一般職員も被害者です。時間外がきちんと払われていれば、誰も夜食など課に出してもらおうとは思いません。自分の金で自分の好きなものを食べますよ。ここのところをぜひ報道していただきたいと思います。

 年度末を迎えて、これから各課の庶務は毎日残業です。不要額を1円も出してはいけないからです。予算はすべて使い切らねばならない、これが役所の常識なのです。無駄づかいという言葉は役所にはありません。国から補助金をもらっている事業課の庶務は大変です。中央官庁が不要額の返還を絶対認めないからです。カラ伝票を操作しても帳じりを合わせる、これが庶務担当者の仕事になります。記者の皆さんは、部長を囲んで、あるいは広報課の主催で懇談会に出席したことがあるでしょうが、この経費は予算には計上されていません。民間の支店長や課長には一定の交際費が認められていますが、県の部長、課長には一切この種の予算が組まれていないのです。当然、必要な経費が予算化されていないため、庶務担当者はカラ伝票の操作を余儀なくされます。硬直化した会計、予算システムのなかでカラ伝票を操作することに職員がおかしいと思わなくなること、抵抗がなくなること、これが一番の問題です。全国の自治体で吹き出している公金の不正使用の温床は実態に合わない会計、予算システムのなかにあるのです。(この点に気がついた群馬県の小寺知事は、来年度から今まで計上されていなかった交際費的な経費を予算に計上すると発表しました)。

 千葉県の場合、更に深刻なことは、各課の課長が幹部職員の私的飲み食いに充てるため積極的に裏金作りを部下に指示しており、これが広く慣行化していることです。どこの課でも、庶務がカラ伝票を作成し物品を購入したことにして、職員に旅費を支給したことにして、裏会計に回し、幹部職員の飲み食いに使っています。大量のタクシーチケットが幹部職員の夜の町の飲み食いに使用されています。(県庁ご用達の富士タクシーの運転手さんを取材すればすぐ裏は取れますよ)

 どうしてこんなことになったのでしょう。職員の資質もありますが、沼田政権が長期化し、側近が固定化し、人事が停滞していることと、議会のオール与党化が進み、県庁内に良い意味の緊張感がないことがこれらの腐敗を生んでいるのだと思います。我々が沼田知事の5選に反対する理由はここにあります。沼田知事とその側近にはこの腐敗を根絶することは不可能です。

 我々は、必要なものは予算化し、不要額は1円といえどもすべて返還すべきと考えています。そのため、硬直化した予算、会計システムは全面的に見直すべきと考えています。だいたい決算書を見て一円の端数までピッタリ使い切って不要額が出ないなんておかしいと記者の皆さんも思うでしょう。

 最後に記者の皆さんに要望します。記者クラブを出て自分の足と頭でぜひ取材をして真実に迫って頂きたいと思います。毎日新聞の1月の論壇に記者の座談会が載っていましたが、その中で「日頃厚生省に情報提供で便宜を受けている記者クラブの記者には厚生省批判はできない」という発言がありました。皆さんが広報課から提供される記事は、当局の手によってあらかじめ問題点が削除され隠されたものであり、このような毒にも薬にもならない記事を読者である県民は喜ぶでしょうか。もともと、国政と比べて地方の首長の権限は強大であり、しかも千葉県のように知事の任期が長期化すると、議会の翼賛化が進むので、権力の専横、腐敗をチェックする最後の砦は県民の目となり耳となるマスコミ以外にありません。県民の知る権利を保障するために、居心地の良い記者クラブを出て取材することを提言します。沼田知事は、皆さんが直接、一般職員と接触し、真実を県民に報道することを心底から恐れています。そのため、記者に聞かれても、各課の課長補佐が対応し、直接職員が答えることは禁止されています。広報課を通せば確かに取材は楽でしょうが、当局が隠しておきたい真実に迫ることはできないでしょう。  記者ひとりひとりの勇気と努力を期待します。


◇             ◇

 1月31日、会計検査院の検査講評があり、住宅課の事務費の不正使用が指摘されました。我々が兼ねてから指摘してきた千葉県庁における公金の乱用の一端が公的機関の調査によつて明らかになったのです。今回指摘されたのはタクシーの不正使用だけですが、これは氷山の一角に過ぎないと我々は考えます。
 沼田知事の在籍は4期16年に及んでいるのですから、すでに明らかになっている福岡や群馬、宮城、青森、秋田、東京の例からいって50億から100億という公金の不正使用が千葉県で行われている可能性があります。沼田知事は5選出馬を表明されていますが、出馬に先立って、これらの疑惑を晴らすため旅費や物件購入費の使いみちを調査する調査組織を結成し究明する政治責任があると考えます。
 ただちに調査委員会を組織し調査を開始せよ。

 1997年2月3日


 沼田知事 様

沼田知事の5選に反対し、情報公開を進める県職員の会




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