山砂採取問題の重大さを実感

〜鬼泪山現地調査ゆっくりウォーク〜




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 (2009年)5月8日、「鬼泪山(きなだやま)現地調査ゆっくりウォーク」が開かれました。
 このイベントは、富津市にある鬼泪山国有林の104班から山砂を丸ごと採取するという計画がもちあがっているため、現地学習会を兼ねて企画されました。主催は「ふわくハイキングサークル」です。参加者は50人でした。


首都圏に残されたかけがえのない緑の空間

 マザー牧場のすぐ近くから出発しました。鬼泪山104班の頂上は標高268メートルです。その山頂をめざし、新緑につつまれた山道を歩きました。
 道はかなり整備されているので、歩きやすくなっています。道の脇や林の中には、めずらしい植物や花がたくさん自生しています。
 野の花では、ハンショウヅル、マムシグサ、オオバウマノスズクサ、キンラン、ギンラン、ヤマツツジ、コメウツギ、ヒメコウゾ、ヤマイチゴ、アザミなどをたくさんみることができました。とくに、オオバウマノスグクサはとてもめずらしいとのことです。獣道(けものみち)もありました。
 まさにここは、首都圏に残されたかけがえのない緑の空間という感じです。


市民の大切な水道水源が枯渇の恐れ

 国有林の中を歩いたあと、関山(せきやま)用水の取水口も見学しました。関山用水は、市営水道と灌漑用水の大事な水源であり、鬼泪山の麓(ふもと)にあります。
 関山用水の取水口に流れ込む湧き水は清流です。大雨でも濁らないとのことです。流量も豊富で、取水口の流量は1日当たり6000トンです。しかし、鬼泪山が削り取られたら枯渇する可能性があります。
 市営水道についていえば、この関山用水と大佐和井戸で富津市民の飲料水の36%をまかなっています。どちらも鬼泪山への依存度が大きく、鬼泪山の採取は重大な影響を与えることになります。


山砂採取の問題点

 現地見学のあとは、富津市の市民会館で学習会です。「鬼泪山の国有林を守る市民の会」の方々が「鬼泪山国有林の山砂採取問題」と題して話をしてくれました。
 昨年(2008年)9月に採取業者(6社)が県議会に採取の請願をし、それが採択されて今年1月に県土石採取採取審議会(土石審)が開かれたこと。同月に「市民の会」を設立したこと。鬼泪山の国有林を守るために署名集めなどをおこなっていること──です。
 山砂採取によるさまざまな問題もくわしく話してくれました。こんな問題点です。
  1. 市民の生活用水の36%をまかっている水源枯渇の恐れがある。また、染川流域の灌漑用水も大きな影響をおよぼす。
  2. 周辺地域の雨量減少や風力増大などの気候変動により、農作物にも影響をおよぼす。
  3. 山砂採取に伴って発生する多量の泥土・飛砂が海に流出し、漁業に深刻な影響をおよぼす。
  4. 山を丸ごと削る山砂採取は、山体浮上現象を起こし、周辺地域の地盤隆起、地下水低下など、修復不可能な被害をもたらす。
  5. 貴重な森林資源、観光資源が消失し、住民に精神的・経済的損失をもたらす。森が果たしている温暖化防止機能、大気浄化機能、保水・水源涵養機能が失われ、生態系の多様性が損なわれる。
  6. 土砂運搬車両が激増し、「ダンプ公害」が周辺住民の生活や交通安全をおびやかす。


60万年以上もかけてできた山を10年でなくしていいのか

 参加者からはこんな感想が寄せられました。

 「現地をみて、自然豊かなすばらしい山であることが実感できた。めったに見ることのできない植物も自生している。景観もすぐれている。そんな大切な山をごっそり削り取ることは絶対にやめさせたい」

 「林野庁は大赤字をかかえているので、この国有林を売りたがっているとのこと。しかし、国有林は私たち国民の財産だ。60万年以上もかけてできた山を、わずか10年ぐらいでなくすことなど許されないことだ。地球環境の保全や温暖化防止がさけばれている現在、それに逆行することでもある」

 「千葉県は、生物多様性や里山の保全をキャッチフレーズにしたイベントや宣伝を盛んに繰り返している。そうであれば、生物多様性豊かな里山である鬼泪山国有林をなんとしてでも守るべきだ。それをしないのなら、生物多様性や里山保全をうんぬんする資格はない」

 「神野寺の近くにある『阿久留王(あくるおう)の塚』も見てきた。阿久留王の伝説は、350年頃、この地に強力な王権が存在していて、ヤマトタケル(日本武尊)率いるヤマト王権の軍と戦ったというものだ。鬼泪山はその戦場とされている。そんな由緒ある山を一部の人たちの儲けのためになくすことは許さないことだ」

 最後に、この問題を多くの人たちに知ってもらい、なんとしてでも守り抜くことを確認しあいました。















鬼泪山の一部。かつては右側に浅間山という大きな山があったが、跡形もなく削り取られてしまった。
鬼泪山の一部も、東京湾アクアラインの「海ほたる」用として削られた。




反対側から見た鬼泪山104班




鬼泪山104班に向かう山道を歩く




鬼泪山104の山頂にある碑




杉林




案内者から説明を聞く




関山用水の取水口




鬼泪山などから湧きだしている清流。関山用水として利用されている。




「鬼泪山の国有林を守る市民の会」の方々から話を聞く




ハンショウヅル




マムシグサの一種




オオバウマノスズクサ




キンラン




アザミ




ヤマツツジ




コメウツギ




ヤマイチゴ




ヒメコウゾ(雌花)




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