ニホンザルと外来種アカゲザルの交雑問題で質疑

〜千葉県議会の予算委員会〜




トップページにもどります
ニュースのページにもどります


 (2013年)2月12日、2月定例千葉県議会の予算委員会でふじしろ政夫議員(市民ネット・社民・無所属)がニホンザルと外来種アカゲサルの交雑(こうざつ)問題をとりあげました。

 以下は、そのやりとりです。


県議会予算委員会の一般質疑



■生物多様性保全にとって危機的状態

◇ふじしろ県議
     千葉県は生物多様性がきわめて豊かな地域である。しかし、「生物多様性ちば県戦略」や千葉県環境白書に記載されているように、外来生物による生態系への影響が心配されている。特定外来生物であるアカゲザルと、房総半島固有のニホンザルの交雑が問題になっている。
     アカゲザルの放逐という人間の行為によって、きわめて短期間に房総半島のニホンザルの地域個体群と固有の遺伝子特性が交雑によって失われてしまう危険性が高い事態になっている。これは、千葉県の生物多様性の保全にとって危機的状態である。
     平成25年度予算案には、外来種緊急特別対策事業として3720万円、野性鳥獣総合対策事業として9279万4千円が計上されている。
     1月16日の新聞報道にもあるように、平成20年度から23年度にかけてニホンザルとアカゲザルの交雑モニタリング調査がかずさDNA研究所の協力でおこなわれ、その結果が報告されている。
     ニホンザルの生息地である房総丘陵のすべての地域でアカゲザルとの交雑個体が確認されている。生息地9市のうち、鴨川、勝浦、鋸南、君津、大多喜、木更津の6市で交雑が確認された。分析した2362匹のうち38匹(オス23匹、メス15匹)、1.6%で交雑が確認された。メスの交雑が確認されたことにより、(アカゲザルのオスや交雑オスがいなくても交雑が広がる)「再生産」の段階に入ったと指摘されている。
     このような状況に対して、県はどのように対応するのか。お答えいただきたい。
◆自然保護課長
     ニホンザルとアカゲザルの交雑を防ぐため、アカゲザルをすみやかに全頭捕獲することを最重点課題としている。ひきつづき、アカゲザルの生息域内で積極的な捕獲に努めたい。
     なお、ニホンザルの群れの中に生息する交雑個体については、確実な判断方法や対処方法が確立されていないことから、現在、対応について検討を進めている。

■モニタリング調査を継続すべき

◇ふじしろ県議
     県は、平成20〜23年度に広域のモニタリング調査をした。しかし、その調査を平成24年度にやめてしまった。生物多様性やニホンザルの研究をされている方々は、「生物多様性の重要性から鑑(かんが)みて、モニタリング調査をやめ、また平成25年と予算案に計上していないのはおかしい」「調査を続けるべき」と言っている。この点についてはどうか。
◆自然保護課長
     平成20〜23年度に実施した交雑モニタリング調査によってデータが蓄積されたことから、今年度(平成24年度)はその分析・評価をおこなった。それによって交雑状況はある程度確認されたと考えている。
     交雑モニタリング調査は、交雑状況の経年変化などを把握するためには必要と考えている。しかし、調査方法や調査頻度などについては、専門家の間でも議論がある。したがって、今後さらに検討したいと考えている。

■千葉の自然保護政策はどうなっているのか!
  〜ニホンザル生息地での交雑は千葉がはじめて〜

◇ふじしろ県議
     下北半島や和歌山県では、ニホンザルとタイワンザルの交雑が心配されたが、交雑を防いでいる。
     交雑がニホンザルの生息地で確認されたのは、千葉県が日本ではじめてである。これはみっともないことである。早い話が、千葉県の自然保護政策は一体全体どうなっているのか、という状態だ。広域モニタリング調査を継続する必要があると思うが、どうか。
◆自然保護課長
     今年度は分析をおこなう。また、捕獲を進めることによって交雑の防止に努めたい。
◇ふじしろ県議
     そのことを否定しているわけではない。分析はきちんとやってほしい。対策もたてて実施してほしい。そうしないと、ニホンザルという、生物多様性豊かな房総半島の宝がなくなってしまう。そんなノンキなことでいいのか。
     ニホンザルとアカゲザルの交雑個体が平成16年から確認されているのに、これまでいったい何をやってきたのか、と思う。
     平成20〜23年度のモニタリング調査で交雑の状況がわかったのであれば、調査をさらに続けていくことが自然保護政策だと思うが、どうか。
◆自然保護課長
     先ほど申しあげたように、調査の方法や調査の頻度などについて専門家の間で議論があるので、今後さらに検討していきたい。

■「調査の実施時期については今後検討したい」

◇ふじしろ県議
     ということは、広域モニタリング調査もおこなうと理解してよいか。
◆自然保護課長
     交雑モニタリング調査は必要と考えている。ただ、いつやるかとか、どんな方法でやるかということについては専門家の意見を聞きながら考えたい。
◇ふじしろ県議
     平成25年度当初予算は骨格予算であり、あと千数百億円ある。調査は必要と考えているということなので、25年度予算に向けて検討していくということを述べてほしい。
◆自然保護課長
     繰り返しになるが、調査方法や調査頻度、そしていつやるかということについては今後検討したい。
◇ふじしろ県議
     ぜひモニタリング調査を再開し、対策をたててほしい。房総半島のニホンザルが日本ではじめて交雑をしてしまい、DNAをなくしてしまった。みっともないことだ。「生物多様性ちば県戦略」をつくっている千葉県の自然保護政策ではない。そういうことをきちんと確立してほしい。



★関連ページ

このページの頭に戻ります
「ニュース」に戻ります。

トップページ | 三番瀬 | ニュース | 自然・環境問題 | 房総の自然 |
環境保護団体 | 開発と行財政 | 自然保護連合 | 書籍・書評 | リンク集 |