「環境より利益が大事」を批判

〜鬼泪山国有林の山砂採取をめぐる県土石審議会〜




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 富津市・鬼泪山(きなだやま)国有林からの山砂採取の是非を審議する第24回「千葉県土石採取対策審議会」(土石審)が(2010年)5月20日、千葉市内のホテルで開かれました。傍聴者は約100人です。


■両論併記で知事に報告へ

 今回も、委員の多数を占める推進派(自民党県議4人と土砂・採石・運搬の各業界代表)が「採取を認めてほしい」の大合唱です。しかし、採取に反対する3つの市民団体が、「同国有林が採取されれば富津市民の水道水や農業用水が打撃をうける」「森林の保全機能や資産価値が喪失する」などとする見解を審議会に提出しています。また、竹内圭司委員(民主党県議)も採取に反対する意見を述べました。
 結局、この問題の審議はこれで終了となり、渡辺勉会長(千葉工業大学教授)が双方の主張を併記した報告書をとりまとめ、森田健作知事に提出することになりました。


■「いちばん安くて、てっとりばやいのは山砂だ」

 審議会では、竹内圭司委員が、「千葉県は森林と山が少ない。このまま山砂採取をつづければ、最終的には森林や山がなくなってしまう。この点を業界はどう考えているのか」と問いただしました。
 そうしたら、業界代表や自民党県議の委員からこんな意見が相次いで出されました。
     「今は、いちばん安くて、てっとりばやいのは山砂だ。将来は山砂に代わるものがでてくるかもしれないが、それまでは山砂しかない」
     「山砂採取は地場産業となっており、それで一家の生計を支えている者がいる。これは生活権でもある」
     「住まない人の意見によって、私たちの生活権が奪われてしまう」
     「入口でフタをするのではなく、環境アセスをやったうえで採取を認めるかどうかを判断すべきだ」


■陳情合戦のようであり、公平な審議ではない

 審議会が終わったあと、「鬼泪山の国有林を守る市民の会」(岩崎二郎会長)が記者会見を開きました。同会は地元の富津市民がつくった団体です。
 市民の会のメンバーはこう言いました。
     「きょうの審議会は異常だったというのが実感だ。利害関係者(土砂・採石・運搬業界)の代表が3人も委員に加わっていて、“お願いします”や“ご理解ください”を繰り返した。陳情合戦のようであり、とても公平な審議ではなかった」
     「県は、“鬼泪山国有林を犠牲にするほどの価値のある公共事業はいま、千葉県では見あたらない”としている。したがって、認可すべきではない」


■自分たちの利益しか考えない人たちに
  国民の財産を左右する資格はない

 記者会見では、地質を専門とする坂巻幸雄さん(元通産省地質調査所主任研究官、元日本環境学会副会長)がこう述べました。

     「私は地下資源を研究テーマとしている。その立場からきょうの審議会の議論を聞き、たいへん奇妙に感じた。『浅間山(せんげんやま)は掘りつくしたので、こんどは鬼泪山国有林を掘るしかない』『山砂採取は地場産業となっているので、地場産業が成り立つように国有林からの採取を認めて欲しい』──。そういう意見が相次いだ。
     これはおかしいと思う。山砂採取のような地下資源産業は、農業や林業、製造業などとちがって再生不可能な産業である。いつかは資源がなくなってしまうという基本的な宿命がある。そういう地下資源をメシの種にしているということを業者の方々は知っていたのだろうか。知っていたのなら、浅間山(せんげんやま)を取りくずした際、そのあとどうするかを考えるべきだった。自分たちの仕事を転換することを視野に準備すべきだった。ところが、そういう準備をした形跡がみられない。浅間山を掘りくずしたら、こんどは鬼泪山国有林の採取を認めてくれという。それでは、国有林を掘りくずしたあとはどうするのかというと、それは50年先のことだからそのときに考えればよい、という。これはあまりにも安易な考え方である。
     そういう姿勢でやっている人たちに国民の財産を左右する資格はないと思う。国民の財産に手をつければ、業者の方々は潤うかもしれないが、そういう考えだけで事を決するというのはあまりにも無責任ではないか」


■環境アセスを事業遂行の口実につかうのはやめるべき

 また、記者から環境アセスについて質問がだされた際、坂巻さんはこう述べました。
     「環境アセスにかんする議論を聞いて非常に不思議に思った。それは、アセスはいったい誰がやるのかということだ。建て前は事業者がやることになっているが、じっさいには業者は調査のノウハウがない。そこでコンサルタント会社に委託することになる。
     しかし、コンサルタント会社は、おカネを出した側に不利になることは絶対に書かない。これは、コンサルタント会社の研究員からよく聞く話である。そういうものが客観的な証拠になるはずがない。
     きょうの審議会でも、ある委員がそのことを率直に述べた。これに対して県(事務局)は、『調査結果は縦覧に供され、県民も意見を言えることになっている』と述べた。県は『環境アセスの調査は数千万円かかるだろう』とも言った。しかし、数千万円かけてつくられた報告書を一般県民がきちんとチェックできるのか。それは無理な話である。
     そのような環境アセスを事業遂行の口実につかうのはやめるべきだ。きょうの議論では、環境アセスを国有林採取の免罪符にしようとする意図がミエミエだった」
 ごもっともな意見だと思います。












鬼泪山国有林。その手前にあった浅間山は、山砂採取
によって9年間で跡形もなくそっくり削り取られた。




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