指定廃棄物最終処分場候補地を見学

〜宮城県栗原市の深山嶽国有林〜




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 2014年4月24日、宮城県栗原市で指定廃棄物最終処分場候補地の見学会が開かれました。主催は、10の市民団体で構成する「指定廃棄物最終処分場候補地の白紙撤回を求める栗原市市民団体連絡会」です。

 指定廃棄物というのは、福島第一原発事故によって1kgあたり8000ベクレルを超える放射性セシウムに汚染された稲わらや汚泥のことです。環境省は、指定廃棄物の最終処分場を宮城、茨城、栃木、群馬、千葉の5県に1カ所ずつ設けるとし、その選定作業を進めています。

 宮城県では、指定廃棄物の最終処分場候補地として3か所があげられています。その1か所は栗原市の深山嶽(ふかやまだけ)です。残りの2か所は加美町(かみまち)の田代岳と大和町(たいわちょう)の下原です。いずれも国有地です。

 宮城県内では20の市と町に約5000トンの指定廃棄物が一時保管されているとのことです。


極秘で候補地を選び、いきなり地元に突き付け

 深山嶽には広大な国有林があります。その一部が最終処分場の有力候補地になっています。

 環境省が3か所の最終処分場候補地を発表したのは、2014年1月20日の宮城県市町村長会議です。3市町に地質調査の受け入れを要請しました。最終的には1か所に絞り込むとしています。地元の市町や住民にとっては、寝耳に水の発表でした。極秘で候補地を選び、いきなり地元に突き付けたのです。

 当然のことながら、3市町では反対運動が起きています。首長たちも受け入れ反対を表明しています。しかし、環境省と宮城県知事は、カネをちらつかせながら水面下で各個撃破政策を推し進めているとのことです。


すぐそばで国内最大規模の地すべりが発生

 こうしたなか、栗原市でも最終処分場建設反対運動を大きく広げようと、現地見学会が開かれました。参加者は約30人です。ほかに、マスコミの記者やカメラマンも十数人が取材に訪れました。テレビ局は東北放送、宮城放送、仙台放送、東日本放送。新聞社は朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、河北新報です。

 栗駒山の中腹に位置する深山嶽国有林の処分場候補地は市営深山牧場に隣接しています。一行は同牧場から国有林に入り、雪が残る尾根沿い(分水嶺)の林道を歩きました。候補地の面積は24.4haです。その中央付近まで500mくらい歩きました。現地は杉やブナの木立に囲まれています。

 深山牧場の標高は515メートルです。標高1627メートルの栗駒山をすぐ近くに望むことができます。また、牧場からは栗原市の街や水田地帯を一望できます。そんな丘陵地が核のゴミ捨て場としてねらわれているのです。

 案内者はこう説明しました。
    「深山嶽国有林に降った雨や湧き水は栗原市内の川や水田などに流れ込んでいる。もし放射能が漏れたりしたら、栗原町は大打撃を受ける」

    「岩手・宮城内陸地震(2008年)の際、深山嶽のすぐそばの荒砥沢(あらとざわ)ダム上流部で大規模な地すべりと崩落が起きた。日本で発生が確認された地すべりでは最大級とされている。このへん一帯の地質は火山灰で覆われているのでたいへんもろい。処分場建設を強行して崩落したら、どうなるのか。恐ろしいことだ」
 籾倉克幹(もみくら・よしまさ)さんは、長年、農林水産省の技官として地質調査にかかわった方です。深山嶽は処分場建設に適さないとし、こう話しました。
    「災害は、人間が知恵を働かせることによって避けることができる。ここは、その知恵を働かせるべき場所である」
 荒砥沢ダム上流部の地すべり跡も地元の方に案内してもらいました。ものすごい規模の地すべりと崩落です。
 栗原市・栗駒山麓ジオパーク推進協議会が設置した説明板にはこう書かれています。
    「東北地方の主軸である奥羽脊梁(せきりょう)山脈は、世界で最も新しい時代の造山帯に属しています。きわめて細長い(南北500km以上、東西端は狭いところでは10km程度)地域で地質的に脆弱(ぜいじゃく)で地殻変動や火山活動などの不安定要因も多いことが知られています。この造山帯の中で発生した岩手・宮城内陸地震では約3500カ所の山地災害が発生しました。そのなかで、荒砥沢地すべりは最も大規模な地すべりです。幅900m、斜面長約1300m、面積約98ha、滑落崖(かつらくがい)の最大落差は150mという日本で発生が確認され中で最大規模の地すべりです。(略)崩れた土砂の発生量は約6700万m3に達し、その量は東京ドーム54杯分に相当します」



風光明媚なところになぜ…

 現地を見たあと、山武(やまたけ)温泉の「さくらの湯」で昼食と交流会(意見交換会)です。

 参加者からこんな声がだされました。
    「処分場候補地を初めて見た。深山嶽は風光明媚で空気がたいへんきれいだ。そんなところになぜ放射性廃棄物の処分場をつくるのか。深山牧場などの観光地やハイキングコースでは、ゴミの持ち帰り運動を進めている。それなのに危険なゴミを持ってくるなんて、絶対に許せない」
    「将来の子どもたちのためにも、処分場建設に断固反対したい」
 連絡会は、処分場候補地の白紙撤回を求める首相・環境大臣あての署名を約1万4千筆集めています。栗原市の農協も独自に署名運動をとりくみ、約2万3千筆を栗原市長に提出しました。








深山嶽国有林を指定廃棄物最終処分場とすることの問題点を
地元の方が説明=4月24日、深山嶽国有林で




田中正造に扮し、指定廃棄物最終処分場候補地撤回を
訴える栗原市民。雪をかぶった後方の山は栗駒山。



栗原市・栗駒山麓ジオパーク推進協議会が設置した説明板。
荒砥沢ダム上流部の大規模地すべりを記している




山武温泉「さくらの湯」には、荒砥沢ダム上流部で発生した
大規模地すべりの生々しい写真が展示してある




山武温泉「さくらの湯」で開かれた意見交換会






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