一宮海岸の侵食防止で懇談

〜千葉県自然保護連合と一宮町長〜




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 千葉県自然保護連合は(2012年)1月13日、長生郡一宮町の町役場を訪れ、玉川孫一郎町長と懇談しました。テーマは、県が南九十九里浜(一宮海岸)で進めているコンクリート製人工岬「ヘッドランド」の見直しと侵食対策です。地元のサーファーも含め、11人が参加しました。


 ヘッドランド工事見直しへの尽力を依頼


 ヘッドランド(10基)建設の目的は侵食対策です。ところが、この工事は侵食を加速させています。そればかりか、九十九里浜の景観や生態系をメチャクチャに破壊しつつあります。南九十九里浜の自然の豊かさを象徴するアカウミガメの上陸や産卵は激減です。ミユビシギの渡来も減っています。
 そこで、地元の一宮町長に対し、町のほうからも工事見直しを県に求めるよう依頼しました。


 「ヘッドランドが一番いいとは誰も考えていない」


 私たちの依頼を受けた町長は、こんなふうに話しました。
     「関係者の合意によって侵食対策のあり方を検討するため、『一宮の魅力ある海岸づくり会議』をたちあげた。しかし残念ながら、ヘッドランドをつくる方向に進んでいる。私はそれを歯がゆく思っている。ヘッドランドが一番いいとは誰も考えていない。県も、ヘッドランドが侵食防止に役立っていないことを認めている。しかし、有効な対案を会議で提起できないことがネックになっている」

     「侵食が進んでいる理由は明らかだ。九十九里海岸の両端部にある屏風ヶ浦と太東岬の侵食防止工事がされたため、そこからの土砂供給が減少した。また、北側では飯岡漁協や片貝漁港、南側では太東漁港の防波堤がつくられたり、延長されたことにより、土砂供給が阻止されている。さらに、河川からの土砂供給も減っている。ほんとうは、漁協や河川を整備・改修するときは、九十九里海岸の侵食も考慮に入れるべきだ。ところが縦割り行政になっているため、そうならない」

     「一宮海岸の侵食対策では、太東漁港や片貝漁港に堆積した砂を、侵食の激しいところに搬入するという養浜が効果的だ。ところが、養浜は建設ではなく維持なので、国庫補助の対象にならない。したがって、いまやっている養浜は県単事業(県が単独で支出する事業)だ。ところが県は、ヘッドランドとの併用ならよいが、養浜だけの単独実施はできないと言っている。そこで町は、養浜も国庫補助対象にすることを国に要望している。このように、公共事業(海岸保全事業)のしくみにも大きな問題がある」

     「侵食対策のあり方を見直すなど、一宮海岸を魅力あるものにしたいと考えている。みなさんもぜひ協力してほしい」


 考えは基本的に同じ


 私たちは「太東漁港に堆積した土砂を侵食箇所にパイプラインで投入するサンドバイパス工法がベストではないか」と提案しました。これに対し、町長は「私も同じ考え」と答えました。
 懇談では、ヘッドランドの見直しを求めている人たちが推進派から脅しやいやがらせ受けていることを、住民が話しました。また、ヘッドランドを提唱した学者が「一宮の魅力ある海岸づくり会議」を主導し、県と歩調をあわせてヘッドランド推進に躍起になっていることも話されました。
 懇談の結果、町長が魅力ある海岸づくりを真剣に考えていることがわかりました。「海岸づくり会議」で議論されていることや侵食対策のあり方、今後の対応などについて意見を交わしました。中身の濃い話し合いになりました。








一宮海岸の侵食対策で玉川孫一郎一宮町長と懇談





一宮海岸(南九十九里浜)で建設中の人工岬「ヘッドランド」

ヘッドランドがほぼ完成している2号と3号の間は、未完成のところ(たとえば9号
と10号の間)や工事対象外(10号の手前の海岸)よりも侵食が激しくなっている。






侵食を加速させるヘッドランド

ヘッドランドが完成形に近づくにしたがい、砂浜の侵食が激しくなっていった。
ヘッドランドは侵食を防ぐどころか侵食を加速するということが一目瞭然である。
そこで県は、2009年度から養浜(土砂の投入)を始めた。


























ヘッドランドが34基つくられた茨城県鹿島灘海岸では、海岸への立ち入り
が禁止されていて、町のあちこちに立入禁止のポスターが貼られている。
このままでは、一宮海岸(南九十九里浜)もこうなることが確実である。




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