「水と緑を守る」 石井宏子さんが君津市長に当選

─放射性廃棄物処分場増設阻止をアピール─



トップページにもどります
「ニュース」にもどります
「放射性廃棄物搬入」にもどります


 2018年10月14日投開票の千葉県君津市長選で、市民派の石井宏子さん(53)が自民・公明推薦の候補らを破って初当選をはたした。君津市は保守王国である。おおかたの予想をくつがえしての歴史的勝利だった。石井さんは、放射性廃棄物処分場の増設阻止を公約にかかげ、「君津の宝の水と緑を守り抜く」と訴えた。放射性廃棄物搬入に反対する市民たちが石井さん当選のために大奮闘した。石井さんの当選は「市民の力」である。


35万人の水道水源に放射性廃棄物を埋め立て

 君津地域では放射性廃棄物処分場が大きな問題になっている。新井総合施設鰍ェ小櫃川源流域で運営する「君津環境整備センター」と、大平興産鰍ェ湊川源流域で運営する「大塚山処分場」の2つの管理型産廃処分場である。1kgあたり8000ベクレル以下の放射性物質を含んだ廃棄物の埋め立てが両処分場でつづいている。この放射性廃棄物は、2011年3月の東京電力福島第一原発事故によって千葉県内で発生したものだ。

 環境保護団体「小櫃川の水を守る会」などは、放射性廃棄物の搬入を中止させるためさまざまなとりくみをつづけている。今年の春以降は、地域住民の学習会や、議員との相談・協議、県交渉などを精力的にすすめてきた。

 2018年の7月下旬からは、君津環境整備センター(君津市怒田)の3期増設を県が許可しないよう求める署名運動にとりくんだ。署名集めは地元の住民と農業者が中心である。約1カ月という短い期間で約5000人の署名を集めた。ところが県は8月6日、3期増設を抜きうち的に許可した。同処分場の第1、2期は、埋め立て容量計200万m3のうち8割ほどが埋まっている。第3期増設の埋め立て容量は221万m3である。

 こうしたなかで君津市長選がたたかわれた。市民派として立候補した石井宏子さんは、県議のときから放射性廃棄物搬入を中止させる運動にかかわってきた。選挙戦では公約のひとつとして放射性廃棄物処分場増設中止をかかげた。「市民が主役となる市政の推進」も訴えた。

 小櫃川は、君津地域の木更津、君津、袖ケ浦の3市に富津市、市原市、千葉市の一部を加えた35万人の貴重な水道水源となっている。農業用水にも使われている。君津環境整備センターの排水は御腹川を通って小櫃川に流れこむ。小櫃川の河口には日本最大級の砂質干潟、盤洲干潟(小櫃川河口干潟)がひろがる。

 御腹川や小櫃川、地下水が放射能に汚染されたら、君津地域の住民や農業者は甚大な被害をうける。そこで、君津地域の多くの住民や農業者などが石井さんを当選させるためにたちあがった。市長選では、これまで選挙運動にかかわったことがない人たちも手伝った。

 君津市は元衆議院議員の浜田幸一がつくりあげた「ハマコー王国」の中心地であった。ハマコーは、東京湾岸の埋め立てや漁業補償、東京湾アクアラインの建設、山砂採取などをとりしきった。その保守王国で市民派の石井さんが自公推薦候補をやぶって市長に当選した。画期的勝利である。


デモ行進と県交渉

 君津市長選の投開票から2日後の10月16日、「小櫃川の水を守る会」や地元土地改良区(6団体)など計10団体は、千葉市中央区の県庁前で増設許可の撤回を求めてデモ行進をした。デモには、地元の住民や農業者たち120人が大型バス4台を仕立てて参加した。君津市長選で増設阻止をかかげて初当選した石井宏子さんも参加した。

 デモのあとは処分場の設置許可権限をもつ県と交渉し、増設許可の撤回を求めた。増設に反対する5677人分の署名も提出した。

 君津環境整備センターでは2012年1月に施設の内部から水が漏れ、施設外にある観測井戸から塩化物イオンが検出された。そのため、現在も一部の施設で廃棄物の搬入がストップしている。10団体はそれを指摘し、「生活用水や農業用水の水源の近くに処分場を許可すること自体が危険だ」と主張した。また、「新井総合施設(君津環境整備センター)の3期処分場が増設されれば、『平成の名水百選』に選ばれている久留里の上総掘り自噴井戸群や小櫃の上総掘り井戸群、農業用水の御腹川、そして35万人の水道水源である小櫃川が放射能で汚染される危険性が高まる」と訴えた。

 これにたいし、県廃棄物指導課の岩崎進課長は「廃棄物処理法の許可基準を満たしているので増設を許可した」「みなさんの心配はわかるので、立ち入り検査や監視をおこない、汚染水が漏れることがないよう指導していきたい」と話すにとどまった。

 交渉に同席した石井宏子さんは、「小櫃川の水を守ることは、未来永劫にわたりやっていかなければいけない最重要課題」とのべた。

 石井さんは交渉後の記者会見にも同席した。石井さんは「市長に就任する11月1日以降、知事と早急に話し合いをさせてもらう」とのべ、あらためて処分場増設反対を意思表示する考えを示した。


県が違法行為

 2018年12月5日の『毎日新聞』(千葉版)は、県水道局が放射性物質を含む汚泥を君津環境整備センターに1万2337m3搬入していることを問題視している。水道水源特措法は知事にたいし、水道水源域の水質汚染を禁じているからだ。同紙は「水道水源を守るべき県水道局が放射性物質を含む汚泥1万トン超を(君津の水道水源域に)運び込んでいた」と記している。県は民意を無視するばかりか、違法行為をくりかえしている。



君津地域の放射性廃棄物埋め立て地





放射性廃棄物処分場「君津環境整備センター」



放射性廃棄物処分場の増設許可撤回を求め、120人が県庁前までデモ行進。
「県は私たちのいのちの水を守れ」「大切な農業用水を守れ」と訴えた。
10月14日投開票の君津市長選で当選した石井宏子さん(左端)も参加した
=2018年10月16日、千葉市内



放射性廃棄物処分場3期増設許可の撤回を県(手前)に求める地元の住民
と農業者。最前列の右から 3人目は石井宏子さん=10月16日、千葉県庁



君津市長に当選した石井宏子さん



★関連ページ

このページの頭にもどります
「ニュース」にもどります
「放射性廃棄物搬入」にもどります

トップページ | 三番瀬 | 産廃・残土 | ニュース | 自然・環境問題 | 房総の自然 |
環境保護団体 | 開発と行財政 | 催し物 | 自然保護連合紹介 | 書籍・書評 | リンク集 |