八ッ場ダムは時代遅れ

〜ダム依存からの転換を〜



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 千葉県自然保護連合は(2013年)5月8日、八ッ場ダム問題で千葉県の担当課(水政課、河川整備課)と交渉しました。


■61年前の計画策定時と社会情勢が一変

 県は、具体的な根拠を示さずに「八ッ場ダムは必要」を繰りかえしました。
 しかし、八ッ場ダムは61年前の1952年に計画されたものです。いまだに着工できていません。計画から半世紀以上がたち、社会情勢は当時と一変です。
 国交省の河川官僚たちは、そんな計画をいまも執拗に遂行しようとしています。彼らの頭はどうなっているのでしょうか。
 交渉で私たちは具体的な事実をいくつもあげ、八ッ場ダムは時代遅れであることを主張しました。


■ダムに依存しない総合治水を求める

 その一つは治水対策です。
 ダムは治水にあまり役立ちません。それは全国各地で実証されています。
 ダムの効果は極めて限定的です。ダムの上流域に大雨が降らなければ意味がありません。また、利水兼用の多目的ダムが多いので、常に一定の量を貯水しています。治水のために空っぽにしておくわけにはいきません。さらに、何十年かたつと堆砂で埋まってしまいます。
 逆に、ダムが洪水被害を大きくした事例も数多くあります。たとえば2011年9月に紀伊半島で起きた甚大な洪水被害はダム放流が主因でした。この点は、『AERA』2011年9月26日号がくわしく報じています。

 ようするに、ダムは金食い虫なのです。
 そこで私たちは、ダムに依存しない総合治水対策を利根川でも実施するよう求めました。超過洪水対策(想定外の大洪水対策)として遊水地の増設も強く求めました。

 その根拠のひとつとして、千葉・真間川(ままがわ)流域の総合治水対策をあげました。遊水地や分水路の整備が進み、洪水で大きな効果を発揮しているからです。

 また、高名な河川工学者や国交省OBも総合治水(流域治水)への転換を提唱しています。
 高名な河川工学者というのは、高橋裕さん(東京大学名誉教授)や大熊孝さん(新潟大学名誉教授)などです。高橋さんも大熊さんも、国交省河川局に多数の教え子を持っているといわれています。国交省OBは、同省河川局で長くダム建設にかかわってきた宮本博司さんです。

 以下は、総合治水や遊水地整備に関する指摘の抜粋です。交渉時に提示しました。



《総合治水や遊水地整備に関する指摘》

●農地や休耕田などを遊水地に活用

 ◇河川工学者・高橋裕さん(東京大学名誉教授)

 従来は考えられていなかった治水方策として、農地や休耕田などを一種の遊水地とする方法がある。常時利用している水田などの農地に、計画的に、大洪水の際に氾濫水を一時貯溜するシステムである。現在、利根川、北上川、淀川水系などには、大規模遊水地が完成しており、すでに洪水時に有効に役目を果たしている。(中略)
 その気で探せば全国に進水地候補地はかなり多く存在する。全国には現在、総計28.4万ヘクタール、すなわちほぼ神奈川県以上の面積に相当する耕作放棄地がある。個々の土地は小面積とはいえ、小河川の洪水にはかなりの貯溜効果を期待できる。近年、局地的集中豪雨が頻発傾向にあるので、もしその土地が河道近くにあれば有望である。しかも、耕作放棄地は増加傾向にある。
(高橋裕『川と国土の危機』岩波新書、2012年)


●いざとなったら被害の少ない所から越流させる

 ◇河川工学者・大熊孝さん(新潟大学名誉教授)

 究極の治水対策ということで、計画を超える洪水に対しても持ちこたえられる治水が必要だと考えています。いざとなったら被害の少ない所から越流させる。越流しても破堤しないような堤防に強化する。越流して床上浸水の被害にあう可能性に対しては、家を少なくとも高床式にしておけばよいし、農業被害の可能性に対しては、お互いいろんなやり方でその被害を軽減する保険などがありうるだろうと思います。それはみんなで話し合えば不可能ではないだろうと思っています。
(大熊孝「川の本質と水害を軽減する究極の治水システム」、
ロシナンテ社編『川辺の民主主義』アットワークス、2008年)


●遊水地をつくったら八ッ場ダムはいらない

 ◇河川工学者・今本博健さん(京都大学名誉教授)

 ちょうどその頃、大学の同輩である前田武志君(現民主党参議院議員)が建設省に入省して、栃木県の渡良瀬遊水地に赴任したのですが、その前田君も「遊水地をつくったら八ッ場ダムはいらんやないかという話が、その当時から仲間内では出ていた」と言っていました。
(今本博健+『週刊SPA!』ダム取材班著『ダムが国を滅ぼす』扶桑社、2010年)


●「流域治水」に転換すべき

 ◇国交省河川局で長くダム建設にかかわってきた宮本博司さん

 高度成長期と違い、今は水の需要は増えていない。また、洪水対策でもダム以外にやるべきことがある。明治以降、治水は雨を川に集める方法を採ってきた。だから堤防が切れると壊滅的な被害になる。堤防の補強や避難態勢の確立を急ぎ、根本的には「流域治水」に転換すべきだ。
 (流域治水というのは)例えば川沿いの低い場所は居住を制限し、普段は公園や農地として使い、洪水時は水をためる遊水地にして、地域に洪水のエネルギーを分散する。河川局でもずっと議論しているのに、従来のダム事業の否定になるため方向転換しない。
(『東京新聞』2009年12月31日)




 以上です。



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